うるさい車に悩まされている人「車を買ってみたけど、ロードノイズ、エンジン音がうるさい気がする。。身近に購入できるものでより静かな車にできるのであれば知りたい~。」
こういった疑問に答えます。
もくじ
この記事を書いている私は、大手自動車会社で3~5年後に発売する車の開発をしていて、7年間音振性能開発に所属しコンパクト車から高級車までの車の発売に携わっていました。
身近に売っているもので静かな車を実現する方法に関して、実体験に基づいて解説します。
■身近に売っているもので静かな車を実現する方法
車に関係する音の発生源として大きく、①路面から伝わるロードノイズ ②エンジンの音があります。
それぞれの音に対し身近に売っているもので静かな車にする方法を解説致します。
もちろん、車は、エンジン自体で静粛性対策をしているのか、もしくは、車の骨格であるプラットフォームによって静かな車に対するポテンシャルが左右されます。
ただ、今回紹介する音対策だけでも変化が分かる程度の違いが実感できる対策なのでぜひ試してもらいたいと思います。
1.ロードノイズ(ゴー、ザー)に対する音対策
一般道で走っている車速(60km以下)ですと、路面入力によってゴー、ザーという音ロードノイズが気になる方が多いのではないでしょうか。
その音をなるべく軽減させるためには、次の4つの方法があります。
①ホイールは、質量が重く、模様が複雑なものを選択する。
②ラゲッジサイド部の内装裏に吸音材を配置する。
③マスバック(ゴム+フェルト)でメタルむき出し部分を覆う。
④ドアのメタルの穴をふさぐ。
それぞれの方策に対し解説していきます。
①ホイールは、質量が重く、模様が複雑なものを選択する。
振動は、車の部品を振動させ、車室内の音へと変換します。
したがって、音をなるべく発生させないためには、振動を伝えにくくすることが大切です。
路面から車に伝わる経路として必ずロードホイールをかえして伝わります。
また、振動が車体や内装へと広がる前で、かつ、振動の発生源(路面とタイヤ間)に近いロードホイールで振動を抑える対策をすることは、最終的に車室内の音を静かにする上で効率的な対策といえます。
では、ロードホイールをどのようなものを選べば振動を抑えることができるのでしょうか?
結論からいうと、
質量が重く、剛性が高そうな構造のものを選択するとよいです。
そうするとホイールアクスルに振動を伝えにくくなります。
ホイールの特徴としては、
・スチールホイールよりもアルミホイールのほうを選択
(物質の比重比較ではスチールの方が重いですが、製法上アルミホイールの方が結果的に重くなります。)
・車両横からみたときにスチール部が細いものでなく、かつ構造が見た目複雑なものを選ぶ。
(物理ができる方であれば、構造的に高さがあり断面二次モーメントがある方がよいです。)
を選ぶとよいです。
振動工学の詳しい説明は、今後記事にしたいと思います。
きちっと本とかで学びたい方がいれば以下の本が基礎理論として一番有名な本です。読んでみるといいでしょう。
②ラゲッジサイド部の内装裏に吸音材を配置する。
自分の部屋の中で、窓を少しでも開けたと外の音が聞こえると思います。
どんなに防音ガラスでも少しでも窓を空けると外の音が聞こえてしまいます。
車でも同様で、外と通じる部分があると、車の中がうるさくなってしまいます。
車の中で大きな穴を空けざるおえない箇所があります。
それは、ドラフターです。
ドラフターは、リアのバンパーを外すと以下の写真のように穴が換気のために必ず穴を開けてます。
出典:<http://ace-spec.jpn.org/?e=322>
ちなみに、もしこの穴をふさぐと、以下2つの不具合が起きます。。
①フロントドアを閉じたときに空気が車中から外に抜ける箇所がないため閉じなくなる。
②外が寒く&車内で暖房の条件下で 窓ガラスが曇るときがある。 このとき、空気の流れが悪いのでなかなか晴れなくなる。
空けざるおえない穴に対し、対策する方法としてはドラフターの周りに吸音材をたっぷり配置することをおすすめします。
自分で手を入れるとしたらラゲッジトリム裏に吸音材である『3Mのシンサレート』を敷き詰めると効果が高いです。
(吸音材にも種類があり、様々なメーカーが発売してますが吸音率という指標で一番良いのが3Mというメーカーです。)
ラゲッジトリムとは、この部品のことです。
出典:https://dictionary.marklines.com/ja/luggage-or-trunk-trim/
③マスバック(ゴム層+フェルト)でメタルむき出し部分を覆う。
お手頃な価格帯の車ですとラゲッジフロア部が室内から車体メタルがみえていたりします。
タイヤの周りやエギゾーストの排気口の音の発生源に対し、ラゲッジフロア部は近いので、
メタル一枚ですと外から室内へ音が伝搬しやすいです。
(薄い壁の部屋に住んだことある方は、隣の音が聞こえるのと一緒です。)
このような場合は、メタル面の音を伝えにくくする必要があります。
効率良く音を減衰させるためにおすすめなのが、マスバック(ゴム層+フェルト)をメタルに敷くことです。(以下の静音計画のフロアマットも同じ構造なのでマスバックです。)
敷く時のポイントは、メタル面が見えなくなるほど敷き詰めることが大切です。
なぜこのマスバックが良いのかを説明すると長くなるのですが、、(詳しい理論に興味のある方は、゛二重壁゛をキーワードに音響工学を勉強してみてください。)
直感的なイメージを説明すると、、、
子供のころお祭りなどで水ヨーヨーを高速で振動させた経験がないでしょうか。
そのときに、水の入った風船が手の振動に対して全然振動しません。
このときの水ヨーヨーのゴム部が マスバック(ゴム層+フェルト) に置き換わる部分であり、
マスバックを設定することによって、空気の振動を抑え、音を伝えにくくするのです。
④ドアのメタルの穴をふさぐ。
ドアの内装トリムを外すと以下写真のようにメタルに穴が空いていてそこにサランラップみたいな薄いシートを被せてます。(コンパクトな車からミドルクラスの車くらいまで)
ドアの下端には水抜き穴という穴が空いていて、そこからこのドアのメタル穴を通り室内に音が伝搬してしまいます。
したがって、このサランラップをもう少し防音対策をすると音が伝搬しにくくなります。
このドア穴は、もともとドア内部の昇降システムや配線の組付けるときの作業穴のために開けている穴であり、
完全に穴をふさいでもよい穴なのです。
出典: https://minkara.carview.co.jp/userid/1553271/car/1150312/2109356/4/note.aspx#title
以下のようなゴムのような素材と粘着物で完全に隙間がでないように塞ぎましょう。
3.エンジンの音に対する音対策
高速の合流時、加速したとき、坂道を走っているときにエンジン音が気になる方がいるのではないでしょうか。
さらに、軽自動車+三気筒エンジンの車だとなおさらエンジン音が気になるシーンが多いのではないでしょうか?
エンジン音は、エンジン自体、もしくは、エンジンと車室内の間にあるダッシュインシュレータという大きな部品で左右されます。
しかし、まだ効率的に音を対策する方法は、あります。
その方法を2つ紹介いたします。
①コックピットモジュール(CPM)部の内装の裏に吸音材を配置する
エンジンと車室内をつなぐ開けざるおえない穴があります。
それは、空調の空気を取り込むインテーク開口部といわれる部分です。
そこから、通常はエンジンの音が 室内に入ってしまいます。
インテーク開口部からエンジンの音が行った先がコックピットモジュール(CPM)です。
コックピットモジュールとは、ハンドルとかメーター、グローブボックスとかが設定されている部分です。
この内装トリムの裏には、吸音材を設定できるスペースが空いています。
CPMのトリムはすぐ外れますので、そこに設定できるだけのシンサレートを詰め込んでください。
もし設定するとしたらここでもおすすめの吸音材は、やはり3Mのシンサレートです。
出典:https://minkara.carview.co.jp/userid/2044377/car/2028106/3461717/note.aspx
②エンジンのアンダーカバー裏やボンネット裏に耐熱性の吸音材を配置する。
エンジンをかけて、ボンネットを開けるとエンジン音が聞こえます。
これはエンジン表面が振動し空気を振動させているから、音が鳴っているのです。
この音が周囲に広がる前に、対策をした方が少ない労力で対策することが可能です。
なので、エンジンの周りであるエンジンアンダーカバーやボンネット裏などに吸音材を置くと効果的です。
エンジンの近くなので、耐熱性の吸音材を使うといいと思います。
市販で売っている吸音材は以下の静音計画しかないようです。
これで『身近に売っているもので静かな車を実現する方法』の説明を終わりにします。
また、元自動車会社エンジニアだからこそのTipsを共有できればと思います。